海月の駄文が公開されます。
子猫の淹れた珈琲を飲みながらどうぞ。。
× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 ―それを見て、あなたはどう思いましたか。 冬の寒さに震えて、教室の机に伏している時であった。 唐突に静寂を破ったその声に、私は驚き、わっと大声をあげ顔を上げた。 …バツが悪い。 大声をあげてしまったことに次いで、今の自分の服装を認識する。 ああ、と心の中で溜息を吐いた。 咄嗟に両手で顔を覆いたくなる。 なんでこんな時に限って…。 私は顔から火が出てしまいそうな恥ずかしさを身に感じながらも、 必死に作り笑いを浮かべて、ゆっくりと声のした方に視線を傾けた。 そこには、 否、 目の前には、 男が、いた。 この学校の制服を着た男。 眼鏡を掛けた、細身で色白の男。 何時の間にか、隣の席に腰掛けていたその男は、 まるで人形のように固まっていた。 私が不思議そうな顔をしても、男は一切微動だにしない。 僅かにも視線を逸らさず、確りと私の目を見つめていた。 誰だろう。 見知らぬ男だ。 ここの生徒だろうか。 私はざっと頭の中をかき回してみたが、判別はつかなかった。 この男は一体…。 私が疑問に眉を顰めると、 男は首を傾げ、口許を綻ばせた。 親しみのある声。 彼の声はよく通った。 「芹沢杏子さん」 男は私の名前を呼んで、ゆっくりと微笑んだ。 綺麗な、綺麗な微笑だった。 異性であれば誰もが一瞬で緊張の糸を解いてしまうような、 そんな優しく、慈愛に満ちた天使のような微笑みだった。 しかし、 私は緊張を弛緩させる代わりに、父親譲りの焦茶色の双眸を細めてそれに応えた。 彼の笑顔、その落ち着いた笑みを私は記憶の何処かで、確かに覚えていたからだ。 PR |
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プロフィール
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海月と子猫
性別:
非公開
職業:
学生
趣味:
書店巡り、読書
自己紹介:
海月のように自由に、
子猫のように気紛れに。
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