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海月の駄文が公開されます。 子猫の淹れた珈琲を飲みながらどうぞ。。
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時刻は二十三時を過ぎた頃だろうか。
見回りの教師を隠れてやり過ごした時分には、辺りはすっかり暗闇だった。
椅子の上で身動ぎしながら、せめてセーターだけでも着てくるべきだったと一人後悔する。
冬用の制服の上には何も羽織っていなかった。
コートも、手袋も、マフラーすらも無い。
この時期の、ましてや夜を前にして制服一丁では拷問以外の何物でもないだろう。

わざわざ提示された条件をすべて呑む必要は無かったのではないか。
そう考え、自分の生真面目さに呆れてしまう。
しかし、私はいつでも生真面目さだけが取り柄だったのだ。
そう都合良く思い直して、震える腕枕の中にすっかり冷たくなった顔を埋める。
それでも、せめて窓だけでも閉めさせてもらいたいと、私は心の中で抗議する。
冷たい風を招き入れる窓を開けっ放しにしておく事も、提示された条件の一つだった。

ふいに、机特有の匂いが鼻先を掠めた。
懐かしい匂い。
今の私にはまったく無縁な、しかしだからこそ懐かしさをより一層近くに感じられる。

学校指定の制服に身を包んだ私は、ゆっくりと腕枕を解いて、ほぅと息を吐いた。
二年も前に学校を卒業した私が、今制服を着て教室で席についている。
遅過ぎるとしか言いようがない。
自分に向かって、なんで、どうして…、という思いが渦巻いてならない。
不意に呟きそうになった「今更」という言葉を喉元で呑み込んで、私は強く目を瞑った。

―私は悪くない、
―絶対に悪くないんだ!

そう何回も何十回も自分に言い聞かせてきたのに、
私はいつだって最後には嗚咽を堪えられなくなる。

その度に、
自分は弱い人間だ、と認識してしまう。
そして、その都度それに甘えてしまう。

だって仕方が無い。
私は弱い人間だもの。
強くなんてなれない。
何も出来ない。
でも、それは私の所為じゃない。
私は悪くない、
絶対に悪くないんだ!

ふっ、と自傷気味に笑みが零れた。
今にして、何故自分がこんな格好でここにいるのか。
こんな凍えるような寒い中何をしているのか。

しかし、私は一つの恐怖の下にここにいる。
それだけは確かである。

私は反射的に、冷たい風の入ってくる窓を見つめていた。
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